会計の時代だ―会計と会計士との歴史 / 友岡賛

会計の時代だ―会計と会計士との歴史 (ちくま新書)

会計の時代だ―会計と会計士との歴史 (ちくま新書)

読了。文章が少々変わっているのと、内容が物足りないのが残念なところ。

会計士の歴史が面白い。英国の状況を紹介しているが、会計士の社会的ステータスはそれほど高くなかった。当初は独立した職業というよりも司法における補助職みたいなものだったらしい。主に破産関連の仕事を請け負っていた。そのためハゲタカのようなイメージを持たれてしまうことになる。この悪いイメージが変わるのが、企業の粉飾決算の多発だ。当初は株式会社において監査人はほとんど機能していなかった。株主代表みたいな監査人が監査していたので、スキルがなく実効性のある監査を行うのは無理があったためである。しかし粉飾決算の増加により、専門知識がある会計士が監査することのメリットが意識され、監査業務に進出することになる。会計士という職業は、破産や粉飾決算という悪いニュースを受けて拡大していくようすが分かる。

関心があった、利益という概念がどのように変化していったかという問題はあまり取り上げられていない。減価償却のみが登場している。減価償却が必要になるのは、産業革命と共に、会社で固定資産を抱えるようになったためだが、当初はあまり必要性は認められていなかったようだ。利益や配当をふくらませるために、恣意的に減価償却を行わないこともあったという。どの程度、固定資産が利用できるのか考えられなかったことも、減価償却の必要性を損なっていた。ただ固定資産をどのように損益計算に関連づけるか、そこに近代会計はあるとさえ言われている。

期間損益の把握も、会計の歴史では欠かせない。これにはビジネスを行う組織の変化も関係している。同族会社のように所有と経営が一体化しており、脱退する可能性も低い場合は、厳密に利益を計算する必要性も小さかった。しかし所有と経営が分離し、持ち分の払い戻しも行われる場合は、持ち分の計算のためにも利益を厳密に計算しなくてはならないようになる。株式会社の登場は一層その流れを強めることになる。

株式会社の歴史も紹介されているが、昨年読んだ「株式会社」(ASIN:4270001518)に重なっている。