転ばぬ先の経済学

転ばぬ先の経済学

転ばぬ先の経済学

引き続き読む。半分以上は読んだ。装丁は地味だし、本文のレイアウトも大してお金がかかっていなさそうな感じだが、書いてある内容はかなり役立ちそうだ。気になった箇所にポストイットを貼り付けているが、かなりの数になってしまった。

よい決断は必ずしもよい結果に結びつくとは限らないという指摘があった。というのも決断でコントロールできるのは自らの行動のみであり、よい結果には自分でコントロールできない様々な要因が寄与しているためだ。しかし、だからといってよい決断が不要かと聞かれれば、それは違うという。良い決断はスキルなので将来にも同じように行える。長期間、平均的に見ればよい結果に結びつくと考えられるためだ。運任せでは一度はうまくいっても何度も繰り返されることは期待できない。

情報に関する指摘も面白い。情報は、決断しようとしている人の考え方や行動を変えるものでなければならないという。すなわち変える可能性が無い情報には価値が無いということになる。情報を入手する際にどの程度のコストを負担するのか、これは決断により影響を受けるものに依存する。大きな金額が絡む決断を変えうるような情報には多くのコストを負担しても良いが、反対の場合はあまりコストをかける必要は無い。この場合のコストはお金以外に時間も含まれる。往々にして、重要度が低い決断に必要な情報を追い求めてしまいがちだ。

情報を追い求める際に、注意しなくてはならないのが、データトラップである。つまり、単にデータが容易に手に入るからという理由で、その問題の分析を行うことだ。紹介されているジョークでは、暗闇に鍵を落としたのに、ライトで照らされている明るい場所を探そうとする行為が取り上げられている。また、アインシュタインの言葉も紹介されている。「計算できるもののすべてが大事ではないし、大事なものがすべて計算できるわけではない。」 意味していることは、数値化できるものに意識が集中してしまうということだろうか。コスト削減に企業が熱中してしまうことも同じかもしれない。コスト削減は簡単に計算できるが、売上をどうやって増やすかは簡単には分からない。