自分を知り、自分を変える―適応的無意識の心理学

自分を知り、自分を変える―適応的無意識の心理学

自分を知り、自分を変える―適応的無意識の心理学

感情の起伏に関する面白い指摘があった。宝くじで1億円当たったと想像すると、長期間にわたって高い幸福感を得られると考えるし、もし愛する人が亡くなったと想像すると、長期間深い悲しみに陥ることは簡単に予想がつく。
しかし人は、このような感情がどの程度長続きするかという点であまり予想がうまくないようだ。喜びも悲しみも予想以上に短い期間で解消し、平常に戻ってしまう。悲しみが早い時期に解消されるのはありがたいと思うが、喜びまでそうなってしまうのは少し残念な気がする。
このような仕組みになっているのは、それなりに理由がある。あまりにも過去の感情を引きずっていると、現状を適切に把握できなくなってしまうためだ。
どのように平常に戻ってしまうのか。そこには過去の出来事を合理的に説明され心のどこかに貯蔵されることによってらしい。納得というプロセスが平常に戻るためには欠かせないようだ。
この納得というプロセスが機能しないのが、アルツハイマーの患者らしい。新しい記憶を形成することができないので、アルツハイマーの患者は常に新しい出来事を経験し、喜びが消えていかないのだという。