人間はどこまでチンパンジーか?―人類進化の栄光と翳り

人間はどこまでチンパンジーか?―人類進化の栄光と翳り

人間はどこまでチンパンジーか?―人類進化の栄光と翳り

引き続き読書。ジャレド・ダイアモンドの著書は、「銃・病原菌・鉄」と「文明崩壊」の2つを読んでいるが、この本が一番面白いかもしれない。2番目が「銃・病原菌・鉄」か。しかし本当にスケールがでかい本ばかりだ。本業は医学部の教授らしいが、この本では言語学あたりにまで言及している。

目から鱗が落ちたのが、農業革命に関する記述だ。第10章「農業がもたらした明と暗」である。
農業は食料の生産性を大幅に引き上げたという利点があったが、逆に病原菌や社会の中の階層が成立させるきっかけにもなっている。農業には利点ばかりではなかったのだ。そのため狩猟採集民もみんな農業を導入したわけではなかった。彼らにはマイナス点が見えていたのかもしれない。
意外なことに栄養失調も農業革命に関係している。農業とともに人の身長は短くなったとの記述もある。狩猟採集民は栄養バランスがとれていたのに対して、農民は栄養が偏っている。現在は人間のカロリーの半分が高炭水化物の植物で構成されているのだ。

またドラッグにおぼれてしまう人間の習性をハンディキャップ理論に結びつけて考えている。つまり「俺はタフな男だから、アルコールやドラッグを飲んでも大丈夫なのだ」と示すことで配偶者を獲得しようとしたのではないか。しかしこの方法は現代では意味をなさない。しかし人間は未だにそれを引きずっているのかもしれない。


農業に関しては、「農業は人類の原罪である」(ASIN:4105423037)も以前より気になっている。