人間の本性を考える ~心は「空白の石版」か (下) (NHKブックス)
- 作者: スティーブン・ピンカー,山下篤子
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2004/09/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 6人 クリック: 17回
- この商品を含むブログ (42件) を見る
子育ての章では、子育てが子供に与える影響はあまり大きくないことを示す研究がいくつも紹介されている。逆に遺伝が与える影響が大きいことも指摘している。このような研究は世間の批判をかなり買うらしい。たいした育児をしなくても子供はまともに育つと言うことは、育児の放棄につながると恐れてしまうのかもしれない。しかし少子化に悩む日本では逆に、子供を持つこと、子育てを行うことに対する不安を減少させ、安心感を与えるのかもしれないと思った。立派な親になって真剣に育児をしなくてもいいのだという安心が生まれるのではないか。育児情報もネットにはたくさん流通しているだろうから、情報に圧倒されて悩む親も多いだろうから、このような親には安心を大いに与えそうだ。また3歳児までの教育が大事だというのも神話であり実証されたものではないという。
育児が子供に与える影響は小さいということがわかりにくいのは、遺伝の影響を無視しているためだ。育児が良かったのか、親の遺伝の影響を与えたのか、誤解しているのだという。赤ちゃんの脳は「空白の石版」であると考える向きには、遺伝の影響は否定されるので、育児の効果が過大評価されてしまう。親が子供に与える影響があると考えられる一方、子供が親に与える影響もある。子供の性格によって親の子供に接する態度が変わってしまう。この手の研究をする際には、因果関係を正しく導き出すことが大事だが、なかなか入り組んでいて解きほぐすのも難しい。
親が子供を育児を通じて自由に作り上げることができるという考えは、遺伝子を操作した結果できるデザイナーチャイルドというアイデアと大して変わらないと指摘している。子供の人格を作り上げるというよりも、子供を人間関係のパートナー(配偶者のように)として接しろということらしい。なるほどだ。
育児が子供に与える影響が小さいというのは、「ヤバい経済学」(ASIN:4492313656)でも主張していたことを思い出した。