20060909

  • 数年前に発生した米国ミューチュアルファンドでのスキャンダルでは、関与した企業は当局に罰金を支払うという事態になった。しかしここからが難しい問題が浮上する。この罰金は、スキャンダルで損失を被った長期保有の投資家に提供されるのだが、どのように賠償を行うべきなのか簡単には答えは見つからないのだ。運用会社で直接購入している場合は、投資家の名前も会社側で把握しているために簡単だが、401Kを通じて投資している場合は、レコードキーパーと呼ばれる口座管理機関を通じてファンドに投資することになるので、運用会社自体は最終投資家を知ることはできない。そのためレコードキーパーに個々の加入者のファンドの保有状況と売買動向をまとめてもらう必要があるのだ。しかしレコードキーパーはこの処理を行うためには多くの時間や投資が必要になり、期日までにデータを用意できるのか、作業を行ってもそのコストを運用会社は負担してくれるのかという問題がある。ファンドの投資家は多くの賠償を期待しているようだが、実際にはほとんどが10ドル程度ほどの賠償しか受けられない。
    気が遠くなりそうな作業が必要になるだろう。
  • グリーンスパンからFRB議長を引き継いだバーナンキは政策決定メカニズムを変えようと進めている。グリーンスパン時代は、政策決定は同氏を中心に行われ、FOMCでも同氏が議論を主導、結果もミーティングの前にすでに決定しているのも同然だった。しかしバーナンキのやり方は少し異なる。FOMCでの議論をより活発に行うために、自らは最後に発言するようにしている。他の参加者が自由に意見を述べやすくしているのだ。このようなやり方は政策決定の透明化を促すかもしれないが、意見対立が表面化するという問題もある。市場とのコミュニケーションに関してもグリーンスパンバーナンキでは大きく異なっている。市場はこの二人のコミュニケーション方法の違いにとまどい、最初は過剰反応を示すこともあったが、徐々に慣れてきたようだ。グリーンスパンは発言の細部で今後の金利に関する考え方を盛り込んだが、バーナンキの場合は、そのようなやり方を行わず、市場はグリーンスパン時代と同じように発言を深読みしすぎてしまうということもあった。民主化を進めるというバーナンキの戦略は自らの発言力を低下させる可能性もあるが、現在のところはそうなってはいないようだ。

  • 世界的に人気を集めつつある中国人モデルDu Juanは中国と欧米のファッションのパラドックスを示している。中国国内ではファッションブランドは西洋と強く結びついているために登場するモデルの多くが白人だ。しかし反対に欧米では中国に対する関心が高まっており、ファッションモデルなどで中国人を起用する例が増えている。 Du Juanは中国国内で行われたモデルのコンテストの事前予想では人気がなかったという。顔があまりにも中国人を代表するものだったためだ。しかし審査員は欧米で人気が出ると判断しコンテストに優勝することができた。 Du Juanの海外での活躍が知られるにつれて、中国国内での彼女への人気も高まりつつある。

  • 90年代にはコンシェルジュがブームになり、高級ホテルだけではなく、中価格帯のホテルにも導入されるようになった。ホテルだけではなくショッピングモールや銀行にも導入されるケースも目立った。しかし最近のホテル業界のコスト上昇を受けてコンシェルジュもアウトソースされる傾向が目立つようになった。ホテルの経費の中でも人材確保に費やされる部分は大きいので外注化することでコスト削減を実現できる。しかしホテルとは関係のない企業がコンシェルジュ業務を請け負うことは問題も生じる。委託する企業はチケット販売業者やレンタカー会社などであるために、ホテルの顧客の利益よりも自社の利益を優先することも考えられるのだ。ホテルに常駐する派遣コンシェルジュ達はホテルの従業員と区別できないような格好をしている。コンシェルジュサービスの外注化はホテルの宿泊客の利益を損ねる可能性もあるが、必ずしもホテルの顧客はコンシェルジェサービスを重要視していないという調査もある。またホテルの自前のコンシェルジュであっても、給与の一部は宿泊客に特定のサービスを奨めて得られるインセンティブなので利益相反関係がないとも言えないのだ。