20060908

  • ITとバイオテクノロジーは似ている。ITが進んだ道をバイオテクノロジーが再び歩んでいるようだ。IT企業の多くがガレージで創業したように、多数のバイオテクノロジー企業がガレージで生まれるかもしれない。技術革新と価格低下により低コストでバイオテクノロジーの研究設備を抱えることが可能になっている。5万ドル程度でそろえることが可能だ。実際、自宅で開業したAgribioticsというバイオベンチャーは高値で売却することになった。バイオハッカーも生まれつつある。DNAhack.comというサイトやBiotech Hobbyistという雑誌も登場している。
    面白い。バイオハッカーか。ここで用いられているハッカーという言葉はクラッカーという意味ではないと思う。しかしクラッカーになったバイオハッカーも登場するのかもしれない。遺伝子操作でとんでもない生き物を作り出したりするようなマッド・サイエンティストのような人だ。
  • 大学アメフトチームの名門校であるノートルダム大学近隣でのインフレ事情。同校のアメフトチームを応援する人たちが試合のたびに大学のスタジアムにやってくる。そのためスタジアム近隣のアパートからホテル、駐車場、レストランに至るまで大幅に値上がりしているのだ。部屋を借りることができずにコンドミニアムを買ってしまった人までいる。ミッション系大学であるノートルダム大学では、需要増加につけ込んで料金を大幅に引き上げている現地のホテルなどには批判的な声もある。同校はアメフトでは名門校であるものの、近年の成績は低迷していた。しかし昨年は新しいコーチにより復活を遂げ、今年は優秀なQBの復帰によりさらなる躍進が期待されていることが、観客を殺到させている。抽選で配布されるチケットの競争率も過去と比較して大幅に高い。裕福な同校の卒業生たちがプライベートジェット機に乗って応援にやってくるために、現地の空港では停車場所が不足する事態にまで陥ったという。

  • 飛行機の機内で携帯電話を使えるようになりつつある。先行しているのは欧州で来年にも機内での会話が実現可能になりそうだ。機内に小さな基地局を設置し、その基地局と衛星の間で通信することで携帯電話の利用を可能にする。格安航空会社のRyanairは通話料金の一部を業者より受け取ることでさらに運賃を引き下げる構えだ。しかし米国では機内での携帯電話の解禁に批判的な声が大きい。隣の席の人の会話がうるさいという悪夢を想像してしまうためだ。FCCは解禁すべきかどうかパブリックコメントを受け付けているが多くが反対している。一方でアジアでも機内での通話サービスを提供する航空会社もあるようだ。需要の動向の鍵を握るのが通話料金だ。

  • HPが取締役会の情報をリークした犯人を捜し出すために、探偵を起用したが、この探偵が利用したのがプレテキスティング(pretexting)と呼ばれる行為だ。あたかも本人を装って、電話会社に電話し、通話記録を聞き出すというものだ。この手の行為はかなりの件数発生しており、電話会社も対策に乗り出している。詐欺で告発するケースも多い。良くあるのが話すことができない顧客の代わりと称して、電話会社の従業員と名乗る人物がコールセンターに電話して通話記録を聞き出す事例である。発信者番号を偽装する機械を利用したり、または音声を変換して性別を偽ることができるような機械を用いるケースもあるという。電話会社は対策として、通話記録は請求書の送付先にしか送付しないとか、あらかじめパスワードを設定しておき、このパスワードをコールセンターとの通話の前に入力させるという処置を導入している。
    一種のソーシャル・ハッキングだと思った。しかしHPの問題はかなり大きくなっているようだ。WSJでも連日、Page Oneで報じられている。
  • 米国での長年のライバルであるNYSENASDAQは主戦場を欧州に移している。両社とも欧州でのM&Aを加速している。NYSEはEuronextを買収する計画を進めており、NASDAQLSE(ロンドン証券取引所)の買収を目指している。両社の欧州でのM&Aの成功の可否は米国での両社の事業の行方に大きく依存している。NASDAQNYSEに上場している株式の取引を積極的に奪っており、市場シェアを高めている。 NASDAQNYSE上場の株式取引のシェアを1%高めると同社の利益は一株あたり1セント上昇し、反対にNYSEは2セント失うと見られている。両社の株価とも下落基調であり、欧州でのM&Aが成功するためには株価を引き上げることが重要だ。NYSEはEuronextを株式交換方式で買収しようとしており、NYSEの株価が下落すればその分多くの株式を提供しなくてはならない状況に陥る。LSE買収を目指すNASDAQLSEの経営陣の抵抗に遭い中断を余儀なくされている。英国でのTOB規制により、NASDAQは10月まで再びTOBを仕掛けることができない。また来年までは前回のTOB価格を下回る価格でのTOBを行えないという制限も付いている。

  • 米国の小売りチェーンは標準化を進めることで成長を実現してきた。同じような店舗を全米各地に設置することで大量買い付けを実現し、コストを削減し、販売価格の引き下げを可能にしてきた。この方法は地域ごとの特性を無視するというコストも伴ったが、無視されていた。しかし市場も飽和状態になりつつある現在、新規店舗の開店で成長を実現することは難しくなっている。既存店の売り上げを伸ばす必要性が高くなっているのだ。このためにウォルマートは、全米を6つの地域特性に分類し、それぞれに異なった店舗デザイン・商品ラインナップを実行しようとしている。同じような試みは他のチェーンでも行っているが、同社の取り組みは規模の点で他社を圧倒している。地域ごとの特性に応じて店舗フォーマットを変えることはコスト上昇にもつながる。今まで同社はアーカンサス州の本社で決めた商品構成や店舗デザインを全米各地で実行するというスタイルだったが、現在は地域ごとのマネージャーに権限が委譲されるようになっている。

  • 長い間、若者文化を主導してきたMTVが岐路に立たされている。最近はMTVの親会社であるViacomのCEOが解任された。解任されたCEOはMTV 創設の中心人物でもあり、企業文化に与える影響も懸念されている。型破りな企業文化はMTVの特徴で、創造性を高めるものと大いに喧伝されてきた。MTVは当初はミュージックビデオを流していたが、ミュージックビデオがごく普通のものになるにつれて、リアリティショーなどの独自制作のコンテンツが放送内容の多くを占めている。しかしリアリティショーを多用しすぎとの声も出ている。MTVの業績自体は悪くはないが、視聴率の低下やネットでの出遅れなどが株式市場では懸念されている。

  • ヘッジファンドに投資したいけれども、特定のファンドに集中投資する事態は避けたいという投資家に人気のあった商品が、ヘッジファンドインデックス連動商品だ。2003・2004年には多額の資金がこのタイプの商品に流入している。しかしここへ来て投資家の資金も流出しているようだ。というのも、ヘッジファンドインデックス連動商品には大きな問題があることが明らかになってきたためだ。パフォーマンスが劣るヘッジファンドに投資する結果になってしまうという問題である。インデックスの対象となっているヘッジファンドは、若いファンドは除外されている一方で、運用成績が良好なファンドも対象外になっている。運用成績が良いファンドは新規資金を求めていないために、インデックスに含まれないのだ。加えて、インデックス連動商品での手数料が高く、これも運用成績を悪化させてしまう。