20060724

  • フランス議会がiTMSで購入した音楽データをiPod以外でも再生することを求める法案を可決した。フランスの政治家にとっては、アップルがiTMSで行っていることはウォークマンでしか再生できないカセットテープを販売しているようなものだと見える。しかしフランス議会の行動に反対する人たちはプリンターとカートリッジの関係に相当すると見る。同じメーカーのカートリッジを使うことで安定したパフォーマンスを提供することができると主張する。このビジネスモデルの場合は利用度に応じて企業は顧客に料金を請求することに等しい。利益の多くはカートリッジで稼いでおり、プリンター自体は低価格で販売しているためだ。しかしアップルの場合は異なる。iTMS事業は損失を抱えているとアナリストは見ているためだ。アップルはiPodを販売するためにiTMSを運営しているようなものだと見る。iTMSで購入する楽曲が多くなるほどiPodから逃れることに対するコストは高くなる。iTMSは一種のトロイの木馬と考えられる。ただアップルもこのような囲い込み戦略に安住するわけにはいかない。大きな魅力が競合他社にあれば、既存資産を捨ててまでも移行は発生する。レコードからCDに移行したのが好例である。

  • ドイツでは付加価値税(VAT)の引き上げが実現したが、法人税の引き下げは困難な情勢になっている。ドイツの法人税は4割近く、ヨーロッパの中でももっとも高い。法人には投票権がないために、法人税の引き上げに熱意を示す政治家は世界を見ても少ない。ブッシュ政権も個人所得税の引き下げは行っても法人税は高止まりさせている。法人税の引き下げは、金持ちを優遇するものという認識が強い。昔は資本の提供者が法人税を負担しているという認識があったが、最近では法人税と労働者の実質賃金との間に逆相関関係があるとの調査も出ている。法人税の引き上げは、投資や貯蓄に対する魅力を低下させ、労働者一人当たりの資本投資が減少し、生産性が低下し、実質賃金が低下するとの理屈だ。特に近隣諸国が法人税の引き下げを行った場合には、実質賃金に与えるインパクトも大きくなる。この調査が示すような因果関係は必ずしも正確ではないかもしれないが、法人税を引き下げに反対することで、庶民を苦しめる結果になりかねないということは政治家も認識すべきだろう。
    "Taxes and Wages"
  • 今年初めに、Viacomは会社を二つに分割した。ケーブルテレビや映画ビジネスで構成されるViacomCBSテレビやラジオ局で構成されるCBSである。この2つは旧体制の下でも激しい縄張り争いを行っていた。分割が行われたものの、2社とも厳しい環境の下で株価はさえない動きを見せている。特に高成長と見られていたViacomの株価下落が激しい。収益悪化懸念が広まっているのだ。この分割を見る限りでは分割すればメディア企業を取り巻く問題を解決できるわけではないことを示している。メディア企業はインターネットを始め技術革新の脅威にさらされている。ViacomCBSとの間は引き続き敵意が残っている。CEO同士も公の場で相手を非難することもある。会社分割前の債務をどのように負担すべきかという問題で両者は争っているという現状もある。

  • 安定した収益が特徴だった3Mで異変が生じている。今月初旬に第二四半期の収益が予想を下回ると発表したのだ。このニュースを受けて株価は急落、ダウ平均の下落につながった。このサプライズを受けて、昨年暮れに就任したCEOに対する不満も出てきた。CEOはそれまで3Mのような大企業を経営したことがないので能力に欠けているのではないかとの声が出ている。収益悪化の大きな原因は、同社の光学フィルムの不振だ。このフィルムは液晶テレビなどで用いられるが、ワールドカップ需要を当て込んで液晶メーカーが在庫を増やしたが、それほど売れなかったことに対応して発注を絞り込んできたのだ。このフィルムは同社の中でも特に収益性が高いので業績には大きな打撃になる。またGEなどがこの分野に参入してきたために競争が激化するとの懸念もある。