20060113

以下の記事を読んだ。6時に起床。妻は出張。月曜日に帰宅予定。

  • 数学者達がウォール街に殺到して、業界の構図をひっくり返し、その前にはエンジニアリング分野でも同様の状況が発生した。現在、数学者達がもっと幅広い分野に進出しようとしている。ネットの普及により多くのデータが利用可能になった。しかしこのデータの山から有益な情報を抽出するには単に高性能なコンピュータだけでは不可能である。優秀な数学者達が不可欠なのだ。彼らは消費者行動を分析したり、遺伝子の解析を行ったり、テロリストの行動を分析したりと様々な分野に浸透している。人間の行動をモデル化するというのも最近起こり始めた。ただこのような行為にはプライバシーの侵害という問題もつきまとう。 IBMではサプライチェーンの管理を労働者のレベルにまで拡大させようとしている。同社のコンサルタントをモデル化して仕事の種類や場所に応じて常に最適なチームを顧客に提供できる方法を考えているのだ。もし同社の試みが成功すると社内利用だけではなく、社外にも提供されるようになるのは間違いない。数学者が扱う仕事が増加する一方だが、人材は足りない。米国の大学で数学を学ぶ学生の多くは外国人留学生であり、アメリカ人学生を増加させるのが大きな問題になっている。数学者は高給で引っ張りだこになっており、数学を学ぶことはキャリアの面でも大きなチャンスを秘めている。管理職であって数学の知識がないといい加減な根拠のデータにだまされかねない。
    以前から読みたかったプロファイリング・ビジネス~米国「諜報産業」の最強戦略を思い出した。なんかこの記事は数学でライバルに差をつけろといったキャリア戦略を提唱しているかのようだ。このBusiness Weekの記事のおまけについている数学を使ったキャリア形成を読むとこの点は明白。微積分が一番有効なようだ。確かに様々な分野で数学が問題解決に利用されていることは納得できる。以前のダイアリーに書いた、航空機に効率的に乗客を搭乗させる方法も数学者が手がけていたと思う。
  • Oracleは近年、アプリケーションを開発している企業を多数買収している。その中にはPeopleSoftやSiebelも含まれている。CEOのラリー・エリソンの野望はこれらの企業が提供するアプリケーションを統合して、SAPに対抗できるソフトウェアを販売することにある。アナリストは同社の狙いには賛同しているものの、買収した多くの企業を統合することができるのか疑問視もしている。この厳しい仕事を任されたのが同社のJohn Wookey氏だ。業績が悪いとすぐに首にしてしまうという怖いボスの下で同氏は統合作業を進めるべく奮闘している。派手で自己主張が激しいCEO異なり、同氏は地味で人の話をよく聞く人物と見られている。このような同氏の性格が買収した企業を統合する仕事にも大きく貢献している。混乱状態に乗じて SAPも顧客を引き抜きにかかっているが、現在のところ同氏の努力により顧客離れは発生していない。

  • ハイテク企業を中心に多額の株式買い戻しが行われている。経営陣も誇らしげに買い戻しに費やした資金を喧伝している。しかしあまり伝えたがらない事実として、株式買い戻しにもかかわらず発行済株式総数はあまり減少していないという点がある。というのも従業員に提供したオプションの行使により株式が増加しており、買い戻しは従業員への隠れた報酬と見ることもできるためだ。ただ最近では従業員に与えたストックオプションの行使による希薄化を防ぐためというよりも、積極的に発行済み株数を減少させる目的で買い戻しを行う場合も多い。また会計基準の変更によりオプションが費用計上されるようになることも、今後は買い戻しの効果が大きくなる可能性がある。買い戻しにより株式数が減少すると、利益総額が一定でもEPSは増加する。そのためEPSだけではなく利益総額の成長率も把握することが投資家には大事になってくる。発行済み株式数の減少によるEPSの成長は、一時的なものと見られるためだ。特に買い戻しの原資が過去に稼いだ利益である場合はなおさらである。

  • スターバックスは映画会社と手を組んで、店内で映画のプロモーションやDVD販売に乗り出すことになった。第一弾の作品として「Akeelah and the Bee」という映画が大々的にプロモーションされる。同社はすでに音楽にも進出しており、映画はそれに続くエンターテイメント戦略の一環である。しかし映画ビジネスは当たりはずれが大きく今までも異業種から参入してきて痛い目に遭っている会社も多い。映画会社としては新しい販売網が広がるわけで好ましい展開である。
    Spelling Beeというスペリングのコンテストを題材にした映画みたいだ。
  • 有機農業で栽培した野菜やホルモンを含まない鶏肉、添加剤を含まない食品、新鮮な調理済み食材などを提供しているWhole Foods Marketは売っている商品の価格も高いが、株価も高い。しかし高い株価には理由がある。同社は食品小売という地味な市場でスターバックスに比較されるほどのブランドを築き上げたのだ。92年に上場してからの年平均売上成長率は3割以上であり、大手スーパーマーケットを大きく上回る水準となっている。ただPERは50倍を超えており、S&P500の3倍以上となっている。そのためアナリストの多くは買い推奨を出すのを控えているのだ。同社は今後も新店舗を次々に開店させていく考えだが、同社が販売するような高価格の商品を買える顧客がどの程度残っているのか疑問視する声もある。また大手スーパーマーケットも同社の戦略をまねて商品構成に有機野菜や調理済み食材などを加えるようになっておりどの程度差別化できるのかという疑問もある。

  • インドのハイテク企業は今年は大きな難関に直面しそうだ。InfosysやTata、Wiproなどのインドのアウトソーシング大手企業は業績は好調であるものの、市場の期待もさらに高いために高成長を維持しないと株は売られやすいと見られている。すでに昨年第4四半期の業績発表ではInfosysが売られている。また米国や欧州で海外への職の流出を懸念する声が高まっていることや、ルピア高も業績には悪影響をもたらしそうである。今までインド株といえばこれらハイテク企業だったが、最近では内需拡大により消費財・車などの株も上昇している。そのため昨年のインド株指数の上昇はハイテク株抜きで実現した色彩も強い。

  • テレビのゲーム番組を研究題材にする経済学者達の紹介。ゲーム理論行動経済学と言われる学派の研究者達がテレビ番組に注目している。Deal or No DealやWho Wants to Be a Millionaire、Jeopardy!などといったテレビ番組が題材として好まれているが特にDeal or No Dealが研究対象としては一番価値が高いと見られている。この番組はオランダで始まり世界中で製作されている。雑学の知識や運試しといった要素がなく、純粋に参加者の意志決定のみを観測することができるために研究者には好都合なのだ。この番組ではそれぞれに異なる賞金が納められたスーツケースから参加者は一つ選択する。そして選ばれなかったスーツケースを空けてゆき、残りのスーツケースが少なくなった状態で参加者にはゲームを降りて一定の賞金をもらうかどうか取引が提示されるという仕組みである。スーツケースに収められている賞金は全体ではわかっているために、残りのスーツケース全体にどれだけの賞金が残っているかはわかる。そのためどの程度の金額でゲームを降りるか見ることで、参加者のリスク回避度を分析することが可能なのだ。研究ではおおむねリスク回避を占める参加者が多かったが、プロスペクト理論に合致する参加者も観測することができた。
    以下の研究論文がwebで読めるようだ。
  • 米国経済の原動力となった、ジャストインタイムの在庫管理を始めとする効率的な物流システムが米国の公衆衛生を危機に陥らせている。インフルエンザなどが突然流行した場合に予備の在庫がほとんど存在しないためだ。製薬会社は安定した買い手が存在しないため、できる限り無駄な生産を行わないようにしている。またコスト削減のために海外で生産する場合も多く、輸送にも時間がかかる。緊急時に必要になるのは薬剤だけではない。この前のSARS流行時にはマスクが足りないという現象も生じた。このような緊急時の在庫をいかに確保するかという問題は、政府の介入なくして解決不能という認識が広まっている。国防のように万が一に備えた対策が求められるというわけだ。政府が安定した買い手として市場に登場することで製薬会社が安心して生産できるようにしたり、独占禁止法の適用を緩和して製薬会社が共同で生産計画などを立案できるようにするといった対策が提唱されている。