20060109

以下の記事を読んだ。

  • ウォール街で18年間破られることのなかった記録がある。プライベート・エクイティ・ファンドであるKKRがRJR Nabiscoを251億ドルで買収したという記録だ。251億ドルという数字は未だに破られていない。しかし今年にはいよいよこの記録を上回る買収案件が登場するとの見方も出ている。100億ドル以上の運用資金を有するファンドがいくつも登場しているためだ。通常ファンドは運用資産の8%を一社当たりの上限として投資し、買収金額の8割はジャンク債などで調達する。100億ドルの資産を有するファンドが7つ連合して買収するとすると280億ドル規模の企業も買収可能になるのだ。ただこれだけの規模になると社債で資金調達をできるかどうか疑問もある。しかし社債で調達できなくても銀行が積極的に貸し出すとの見方もある。銀行は債権を分割し売却することが容易になっているためだ。しかし大規模な買収が高い利益をあげることができるかどうかは不透明である。 RJR Nabiscoでも稼いだ利益よりも買収の際のドラマの方が記憶に残ってるほどだ。また多くの人員を抱えていないファンドが巨大コングロマリットに匹敵する投資先企業を管理できるのかという疑問もある。
    ナビスコ買収劇に関しては野蛮な来訪者―RJRナビスコの陥落〈上〉野蛮な来訪者―RJRナビスコの陥落〈下〉が詳しい。大学生の頃に読んだ。米国ではテレビドラマにもなったと聞いたことがある。普通に読んでいても充分面白いんだから、ドラマでもぜひ見てみたい。
  • ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハザウェイは多くの買収を繰り返してきたために、当の本人でさえ把握するのが難しくなるほど複雑な企業になってしまった。同社は保険会社であり、持ち株会社であり、投資信託でもあるのだ。評価が難しいことから同社の株式を保有する投資信託ブレンド型と呼ばれる何でもありというタイプのものが多い。このような複雑な会社をどのように評価すればよいのか、様々な見方がある。まずPBRで評価する方法だ。この尺度によると同社は割安となる。また割引キャッシュフローモデルでの評価でも同社の株価は割安と出ている。同社の株価は昨年横ばいで推移した。同社が割安に放置されている理由としては、大型株に対する人気が落ちていること、子会社のGeneral Reに対する捜査への懸念、バフェット本人がいなくなってしまうことへの不安などがある。75歳にもかかわらずコークとハンバーガーが好物というバフェットに対しては健康面での不安を感じる向きも多い。もしもっと同氏が若くて健康的な食生活をしていれば株価はあがっているかもしれない。
    もうすぐバークシャー・ハザウェイの年次報告書が発表されるシーズンだ。
  • Gapは90年代後半に、オフィスにおけるカジュアル化の流れに乗って急成長を遂げた。しかし2000年以降は顧客ニーズを把握するのに失敗し続け業績は悪化している。経営陣の交代を行い、ディズニーからCEOを招聘した。新しい経営陣の下でコスト削減などを通じて業績は回復し、財務体質も大幅に改善されたが、商品ラインナップではまだまだ見劣りがする状況にある。同社は現在店舗デザインのリニューアルを進めており、成果も出始めている。大手チェーンは規模の経済を追求するためにどこでも同じような店舗を展開してきた。同社も同様である。しかし消費者は画一的なイメージには物足りなさを感じるようになっており、同社の店舗は地域毎に特色を生かし、より家庭的な暖かいイメージを出すように考えられている。参考にしているのがスターバックスの店舗である。Gapの社員は店舗デザインのリニューアル化を進めるために、世界中を旅行し小売だけではなく様々な体験を行い、リニューアルに向けてのアイデアを探し求めた。リニューアルを行った店舗では、フロアや照明が変更になり、印刷されたポスターではなく黒板が用いられる。長い間店舗に滞在できるように、ソファーが用意され地元の新聞も備え置かれている。マネキンも地域ごとの特性を生かして店員が自由に服を着せることができるようになり、販売される商品も販売動向や顧客の特性を判断して店舗毎に構成が異なっている。
    ユニクロは日本のGapのようなものか。
  • 米国自動車産業は米国製造業の強さの象徴だと見られていたが、現在では航空・製鉄などと同じく旧態依然としたやり方に縛られた衰退産業だと見られるようになりつつある。米国自動車市場はかつてはビッグ3による寡占状態にあったが、現在はトヨタ自動車を含め8社程度の世界的な自動車メーカーが過酷な競争を繰り広げる厳しい市場となっている。GMやFordが倒産する可能性さえ真顔で論じられるようになっている。GMの倒産可能性は社債価格を見る限りでは50%程度になっている。同社の苦境はいわゆる「レガシー・コスト」によるものだ。これは従業員に約束した年金や健康保険に伴うコストであり、このコストは単に同社の経費を増やすだけではなく、生産やマーケティングなどの意志決定にも悪影響を及ぼしている。組合との間で、レイオフされた従業員にも報酬が提供されているので、需要が少ない車種でも生産を維持する方向に傾いてしまう。また多すぎるブランドの統合も大きな問題であり、トヨタと比較しても多くの系列・ディーラーが多くの車種を販売しており非効率になっている。来年にはUAWとの契約更新という大きな問題があるが、それ以前業績が一時的にでも回復してしまうとコスト削減を組合に飲ませることができないことになってしまう。

  • インドが、中国のように商品市場に大きな影響を与えるようになるかどうかが論じられている。しかしアナリストは当分の間はインドの経済成長に伴う商品需要が市場を押し上げるまでには至らないと見ている。理由としては、製造業中心の中国に対してインドはサービス産業中心で成長を遂げているという面がある。また経済規模がまだまだ中国と比較して小さいというのもあげられる。インドの一人当たりの鉄鋼使用量は中国の5分の1程度となっている。しかし遠い将来を考えると、インドも中国のように大量の原材料を調達するようになるとの見方もある。人件費が上昇しつつある中国よりインドへ生産拠点を移行する可能性があるためだ。ただ自国で調達できる原材料もあるため輸入に対する依存度は商品により異なってくる。たとえばアルミ生産に必要なボーキサイトは国内で調達できる比率が高いのに対して、ニッケルは全面的に輸入に依存している。