- 作者: ジャレド・ダイアモンド,楡井浩一
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2005/12/21
- メディア: 単行本
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スカンジナビアを起源とするバイキングたちは様々な場所に入植していった。グリーンランドやアイスランド、フェロー諸島などである。同じような気質を持つ民族がそれぞれ環境・気候が異なる場所に入植したために、現在から見ると一種の壮大な社会実験と写る。
意外に思えたのが、グリーンランドでは魚を食べることがほとんどなかったという事実。魚をよく食べるバイキングの子孫であることや、現在のグリーンランドの主要産業が漁業であるを考えると意外に見えるので考古学者も信じようとはしないらしい。たまたま魚の骨がごみ捨て場からみつからなかっただけだと。しかし著者は一種のタブーが魚を食することに対して存在していたのではないかと見る。グリーンランドは辺境の地でありながら、欧州の一部としての意識が強く、加えてキリスト教徒としてのアイデンティティも持ち合わせていた。そのため資源が少ないにも関わらず、豪華な教会の建設に貴重な資源を投入することになり、生産性を低める結果になってしまった。加えてキリスト教徒としての意識が、イヌイットから学習することを妨げていた。
アイスランドは現在は豊かな国だが、昔は貧困にあえいでおり社会全体が滅亡する危機にも直面していた。このような経験は現在のアイスランド人の気質にも大きく影響を与えている。つまり保守的で変化を嫌う性格だ。常にぎりぎりの状況で生き延びてきた国だけに実験を行う余裕はなく、今までうまくいったことだけを忠実に行うという気質に結びついているという。