20051118

以下の記事を読んだ。今週のBusiness Weekのカバーストーリーはピーター・ドラッカー。面白そうだ。

  • 沿岸部で、工場跡地を住宅として再開発する動きが進んでいる。土地価格が上昇しているため、競争力のなくなった工場を閉鎖して跡地を住宅地に転用して高値で転売している。工場を保有している企業は、不動産開発に乗り出すことを好まないので、工場の跡地を安い価格で不動産会社に売却している。不動産会社は土壌汚染の問題を解消し、自治体から住宅地への転用許可を得て、マンションなどの開発を行う。またプライベート・エクイティファンドが保有する企業がリストラの一環で処分する工場なども住宅地に転用されることがある。このような住宅地への転用は問題もある。工場のほうが長期的に税金を払ってくれるために、住宅地に転用すると税収が悪化するのではないかという懸念や、残った工場に対して新しく住み始めた住民が騒音の苦情を申し立てる可能性があるといった問題である。
    東京の湾岸地域と同じような現象。
  • 感謝祭直後の金曜日はブラックフライデーと呼ばれている。小売業者にとっては利益が出る(売上が出る)一日だからだ。もちろんこれは昔の名残であり、実際にはこの日まで利益が出ないということはない。この日には多くの小売店が目玉商品を並べて客を獲得しようとしている。どのような目玉商品をいくらで販売するかという情報は小売店にとっては機密情報だ。そのためぎりぎりまで明らかにしない。しかしネットの普及がこの構図を変えつつある。いくつかのサイトで、ブラックフライデーのだいぶ前から小売店ごとの目玉商品とその価格を掲載している。情報源はチラシを印刷している印刷会社や社内の人物と見られている。このような価格情報をセールのだいぶ前から公開されてしまうと、消費者の買い控えを誘う上、競合会社による対抗策も講じられる可能性が高い。そのため小売会社ではサイトに対してトレードシークレットの公開を行っているとして情報の撤去を求める行動も起こしている。
    価格コムみたいなものか。
  • テキサスにある墓地の管理人の話。この墓地はTexas State Cemeteryといい、テキサスの住民の中でも特に功績の高い人のみが埋葬される墓地となっている。そのためワシントンDCにあるアーリントン墓地のテキサス版といったところだ。しかしアーリントンの場合は埋葬できる人に厳しい制限が設けられているが、この墓地の場合は確実に埋葬してもらえることになっている議員以外は、かなり定義が曖昧なので多くの希望者が申請している。多くの人が生前にこの墓地の区画を押さえている。多数の希望者の中からどの人を最終選考委員会に推薦するか、それを決めるのが管理人の仕事である。はっきりとした基準がないだけに難しい判断が求められるという。

  • 学校での遅刻への対策が強化されつつある。あめとむちを使い分けてなんとか生徒の遅刻を減らすように教員は努力している。あめとしては遅刻しなかった子供には映画を見せたり、パーティーに参加させたり、プレゼントを与えるといったものがある。反対にむちとしては居残りや遅刻者用の部屋に押し込めるといったものがある。統計はないものの、学校関係者の中では遅刻が大きな問題となっている。特に子供の成績によって学校に割り当てられる資金が変動するような状況になりつつあるなかで、遅刻者を減らすことは一層重要になっているのだ。最近の子供はハイテクに囲まれた生活をしており、夜更かしをするようになっている。一方で親も共働きで忙しく、これも子供の夜更かしを後押ししているのだ。

  • 今年のクリスマス商戦の中でも一番の目玉なのが、マイクロソフトXbox 360だ。来週発売となるが、充分に商品が供給できるように同社では最善の努力を行っている。Xbox 360には1000以上の部品が組み込まれており、最終製品は中国にある二つの会社で組み立てられる。特定の部品が不足して製品の供給が遅れないように注意している。最初に充分な商品を用意して販売を加速することが、その後のソフトウェアの供給を促し、コンソールのさらなる売上につながるという好循環をもたらす。同社は初代のXboxでは苦い経験をしている。ゲーム機は最初はコスト割れで販売して、その後は生産台数の増加とともにコストが下がり利益が出る構図になっている。しかし初代Xboxの場合はインテルMPUに依存してしまったためにコスト削減が進まなかったという問題があった。その反省から今回は、同社はIBMと共同でMPUを手がけており、コストに関してもコントロールできる状況にある。しかしハードディスクなどは汎用製品であるが、MPUIBMの2カ所の工場で生産しているだけなのでボトルネックになる可能性があるとアナリストは指摘している。
    クリスマスプレゼントの目玉とは、Xbox360の魅力はそんなに高いのか。
  • フォルクスワーゲンにおける経営陣と労働組合の癒着の構図が暴露された。労働組合はドイツ企業では大きな権限を有している。他の国では取締役会に相当する最高意志決定委機関で労働組合は半数の座席を所有することができるためだ。しかも同社の場合は州政府が大株主であるため、一層労働者側への配慮を必要とする状況にあった。このような状況の中で同社は、労務担当者を通じて、組合の幹部を世界中に観光旅行に連れて行ったという事実が明らかになった。しかも驚くべきことにこの観光旅行には売春婦まで含まれていたことだ。これはすべて会社の資金で行われており、ほとんど領収書もなく労務担当者の個人口座を通じて支払われていたという。この労務担当者は納入業者からリベートを強要した疑いで解雇・起訴されており、供述の中で一連の旅行が明らかになった。同社は最初はこのような旅行を否定していたが、社内調査を受けて一転して認めている。解雇された労務担当者の上司(シュローダー首相の右腕としても知られている)もこの事実を認め辞任した。一連の出来事は、ドイツ企業における組合と経営陣の癒着を示しており、これがドイツにおいて改革が遅く、経済成長も鈍化している原因ともなっている。同社は90年代はゴルフなどの車種で好調だったものの、その後高級車市場に進出したことがきっかけで業績は悪化している。

  • アフリカのモザンビーグとジンバブエは白人の農民に対して正反対のアプローチを取っている。ジンバブエはそもそもローデシアと呼ばれており多くの白人農民が農園を経営していた。白人に対する感情は悪くなかったのだが、大統領が支持率低下のてこ入れとして白人への攻撃を激化したことから、白人に対する風当たりが強くなった。そのため農園には不法占拠が相次ぎ殺害される白人まで出るようになった。しかしこの様子を見ていた隣国のモザンビークは、白人にアプローチをかけ、税制上の優遇や低価格での土地のリースなどの特典で白人農民の勧誘に乗り出したのだ。白人農民には技術力・資本力があるためだ。これを受けてジンバブエからモザンビークへ移住する白人農民も出ている。今のところはモザンビークの雇用にも貢献し、農産物の生産も増加し、地元社会からの受けも悪くない。しかしこのような状況がいつ変化するかという不安が白人から消えることはない。モザンビークは以前社会主義的勢力に支配されており、白人は追い出されるという暗い過去があったためだ。