20050623

以下の記事を読んだ。
・オーストラリアの近くにあるタスマニア島では昔より養蜂が盛んであった。しかし森林の伐採や焼き畑も進んでおり、ミツバチの生態系が破壊されるとの懸念が高まっている。ミツバチは蜂蜜を生産するだけではなく、農家にとっても受粉を行ってくれるありがたい存在である。森林を伐採する企業は、保護区域が設定されているため、ミツバチの生態系には問題がないとしているが、養蜂家たちは農家なども巻き込んで反対運動を進めている。


・エンジェルというベンチャー企業に投資する個人投資家が存在するが、この手の投資家から資金を調達するのは難しかった。一人のエンジェルが出資する金額は大して大きくないためにそれなりの金額を集めるには、多くのエンジェルと交渉せざるを得ず、手間がかかってしまうのだ。しかし最近はエンジェルを組織化する動きが進んでおり、多くのエンジェルから一度に多額の資金を調達することができるようになりつつある。このような組織の中には専門のスタッフを抱えて、案件の調査を行うところもある。またこのような組織がチームを組んで、一段と多くの資金を提供するという事例もある。エンジェルも単独で投資を行うよりも組織を通じて行った方が、リスクを分散できるというメリットがある。


・ブログを調査することで、新商品の開発や販売戦略を立てる際のアイデアを得ようとする動きがある。企業を支援するための会社もいくつか登場している。ブログに書かれた内容のほうが、消費者を集めて意見を聞くよりも効率的であると考えているのだ。単にキーワードを入力してチェックするだけではなく、自然言語処理を行うことで人口動態別に内容を分析するというサービスまで提供するところもある。


・経営トップが、自らの個室にこもるのではなく、一般社員と同じオフィスで仕事を行うというスタイルは平等主義を謳っているものとして昔より存在している。しかしCEOの近くで仕事をする羽目になった社員は、必ずしも近くにCEOがいることを喜んでいる訳ではないようだ。オフィスをきれいにしたり、においを気にして食べるものを変えたりする社員もいる。またCEOの電話での会話を周りの社員に聞かれる可能性もあり、極秘情報が漏れてしまう危険性もある。反対に CEOの素顔をよく知ることで親近感を持つという効果もあるようだ。中には、方針を変えて再び個室に引き返し、代わりにオフィスを歩き回ることで社員の様子を探ろうとする経営者もいる。また個室は持つものの、毎年異なる部署の近くで仕事を行うというスタイルを採用する企業もある。


原油価格が高値で推移している中、投資家の中には原油に取って代わる代替的エネルギーに着目する向きも多い。今までもこのテーマは頻繁に登場していたが、期待はずれに終わったことも多い。またこの手の企業は小規模すぎて機関投資家にとっては投資しにくかったり、価格変動が大きいという問題もあった。そのため代替的エネルギーに注力する大手企業に着目する向きも多い。この観点からいえば、南アフリカのSasolやFPL Groupなどが当てはまる。SasolはGTLと呼ばれる技術で天然ガスディーゼル燃料に変換する事業を進めている。FPL Groupは風力エネルギーでは大きなシェアを有している。もっと代替的エネルギーのピュアプレイを望む向きにはKFXという企業もある。これはヘッジファンドのお気に入りで株価は急騰している。しかし弱気筋も多く、空売り残も高水準である。同社は安い低品質の石炭を高価格・高品質の石炭に変換するという技術を開発している。


・階層の固定化が進む米国社会の現状を伝えるシリーズの5回目。ミルウォーキーにみる製造業労働者とサービス業労働者の生活水準の違い。この町では多くの製造業が存在しており、減少したとはいえ、現在でも全国平均よりも多くの労働者が製造業に従事している。昔は高校を卒業して製造業に従事していれば、同じ仕事を長年行っていても、昇給・昇進に恵まれ、魅力的な隠居生活を送ることができた。しかし最近の雇用の原動力となっているサービス業ではこのような図式は成立しない。学歴がなければ同じ仕事を行っても昇給がなく、ずっと底辺の仕事を続けるよりほかないのだ。そのため親の所得を上回ることができない労働者も多い。同じサービス業の企業に勤めていても学歴の差で大幅に所得が異なることになる。昇給を目指すには学歴または資格を取得する必要があるが、費用の問題で多くの労働者は取得することができない。雇用主も従業員にそのような機会を与える余裕はなくなっている。学歴が所得格差につながる構図が明らかになる中、親の学歴が子供の学歴に与える影響が大きくなっている。大学卒の親の子供のほうが、そうではない場合よりも大学に進む割合が大幅に高いのだ。貧しい労働者が住む地域をはじめ公的教育サービスの水準が低いことも、この構図を強化している。



代替的エネルギーといえば、燃料電池を思い浮かべるが、上記の記事ではそれには触れられていなかった。Ballard Power Systemsなどは一時かなり人気だったと思うのだが。
経営トップが一般社員と同じオフィスで働くのは、賛否両論ありそうだ。個人的には社長が横の机で仕事されるのはいやかな。
シリーズものである米国社会の階層の固定化の記事も面白い。このシリーズの記事を読んでいると、つくづく米国とは厳しい社会だなあと思う。みんな必死に生きているような感じだ。それでも希望を持っている(ように見える)のはアメリカンドリームという幻想があるからなのだろうか。日本もこのようになってしまうのか。現在のメディアの論調を見る限りではそんな気もするが、悲観的な予想が正しいという訳でもないし。