20050327

TH55で以下の記事を読んだ。
・米国で小切手の利用が減少している。90年代後半にピークをつけた後、急速に減少しているのだ。消費者は小切手よりもクレジットカードやデビットカード、電子支払いシステムなどを好むようになってきたためだ。ただ依然、現金以外の決済手段としては小切手が周流であることは変わりがない。小切手を使わなくなっているのは若い世代だけではない。高齢者でも小切手離れが進んでいる。小切手を印刷している会社や、小切手を輸送している会社などは、主要市場が縮小する中、新規市場への進出を進めている。銀行は、小切手の処理にはコストがかかるために小切手離れからは恩恵を受ける一方で、関連の手数料収入が減少するという副作用もある。


投資銀行の自己勘定取引部署から独立して、ヘッジファンドを立ち上げるトレーダーが目立っている。(自己勘定取引の部署をprop deskというようだ) 最近ではゴールドマン・サックスのスタートレーダーが退社してヘッジファンドを立ち上げた。ヘッジファンドでは有能な人材を獲得する草刈場として自己勘定取引の部署を狙っている。ただ、投資銀行で会社のお金を使ってトレードを行なうのと、自らヘッジファンドを立ち上げて投資家のお金を運用するのは訳が違うと指摘する専門家も多い。独立した場合には、投資銀行内部で得られる様々な情報を入手できなくなるためだ。ヘッジファンドは毎月、運用成績が監視されるために、トレーダーにかかるストレスも大きくなる。また投資機会があってもなくても運用しなくてはならないというプレッシャーも大きい。独立してヘッジファンドを立ち上げるのは、単にトレードがうまいだけでは不十分だと指摘する。経営者としての能力が必要なためだ。ヘッジファンドを立ち上げるには1億ドル以上の運用資金が必要だといわれており、この水準に届かずに店じまいするファンドもある。このようなリスクがあるために、投資家はできたばかりのヘッジファンドに投資する際には慎重であるべきだと指摘する。ただ当初の運用成績が良好だと、あっという間に資金が流れ込んでくるため新規資金を受け付けるのを止める場合もあるので様子を見ていると投資できなくなる可能性もある。このあたりが投資家にとってのジレンマとなっている。


ヘッジファンド業界の現状。多くの新規ヘッジファンドが設定され、多額の投資資金が流入しているため、バブルとの指摘も多い。しかし業界内ではバブルを警戒する声は少ない。ヘッジファンドは投資の仕組みであって、資産クラスではないためバブルが発生しようがないというのだ。多くの投資家がヘッジファンドに引き寄せられている現在では、SECもヘッジファンドには大きな関心を寄せている。また90年代後半に発生したLTCMの破綻のような惨事が再び発生しないように、FRBも警戒を強めている。ヘッジファンドは10兆億ドル程度の規模だが、レバレッジを行なっているために、市場に与える影響は投資信託と比較して格段に大きいのだ。現在では市場の動きの半分程度が既にヘッジファンドによるものとの指摘もある。ヘッジファンドという商売は、参入は比較的容易だが、生き残るのは難しい。多くのファンドが閉鎖に追い込まれてしまうのだ。適者生存がこの業界を貫徹しているのだ。ヘッジファンドとは資産運用のイノベーションというよりも、報酬体系のイノベーションだと指摘する専門家もいる。運用資産残高に対して一定の報酬を徴収するのではなく、成功報酬を徴収するためだ。現在では1%程度の運用報酬と、20%程度の成功報酬が一般的だが、これも競争激化にもかかわらず上昇基調にある。反面、運用成績はここ数年は冴えない展開となっている。


最後の記事はヘッジファンドの現状がよくまとまっていて面白い。分量も多いが。New York Timesの日曜日のビジネス欄は長文の面白い記事が多い。