20050316

TH55で以下の記事を読んだ。
・コンピュータセキュリティの基盤となっているハッシュ関数を生み出すアルゴリズムとしてSHA-1というものがある。これは信頼度が高く、政府機関をはじめとして多くのサイトで利用されている。しかし最近、中国の大学の研究チームがこのアルゴリズムは予想以上に簡単に破ることができるとの論文を発表しており、業界内に波紋を引き起こしている。既に米国政府では新しいバージョンに切り替えるように呼びかけている。


・インドの修道院で育てられた米国人の数奇な人生。この子供の名前はDajaといい、両親はヒッピーで、世界中を旅行している際に、スイスで生まれた。その後インドで、母親は出家すると言い出し、精神病になっていた父親に子供を養育させるわけにはいかなかったために、チベットの里親に預けられることとなった。その後、母親の勧めでインドで仏教の修道院で暮らすことになった。母親は米国の物質社会には幻滅していたものの、子供は結局10代後半になって米国に移ることになった。その後は同じくチベットから来ていた女性と結婚し、大学で勉強することになった。卒業後は、妻と一緒に中国によるチベット弾圧を批判する運動を行なうようになった。中国に旅行に行った際には、当局に拘束されたが、協力者の名前を明かすと彼らが危険にさらされるために、死ぬのを覚悟で部屋の窓から飛び降りるという武勇伝も残している。この一件で彼は世界中のニュースで取り上げられ、英雄となったが、体に大きな後遺症を残すことにもなった。通常とは大きく異なる家庭環境で、両親からの愛情も注がれずに育ったために、30代になった今でも母親が理解できないという。しかし最近では母親も米国に帰国して子供とのコミュニケーションも深まり、溝も埋まりつつある。


・ドイツでは、今週にも昨年夏に発生したCitigroupによる債券市場での価格操作の立件を目指して会議が行なわれる。検察とBafin(ドイツの市場監督当局)との間で会議は行なわれる。ドイツでは価格操作には刑事罰が課せられる。有罪になればトレーダーは最高5年の懲役に服することになる。英国やイタリアでも同様の動きが進んでいる。Citigroupは不適切な取引であったものの、法律には反していないとコメントしている。ドイツでは多くの価格操作事件が検察に回されているものの、価格操作の意図を立証するのは難しく、有罪を勝ち取るケースは少ない。


・ニューヨーク司法長官によるAIGへの捜査は、同社が再保険を利用して業績を実態以上に良く見せていたのではないかというものである。同社の捜査は既にAIGのCEOであるGreenberg氏の退任を引き起こしている。この再保険はGeneral Reが相手方となっているため、捜査の焦点はGeneral Reに向けられるのではないかとの懸念が出ている。同社はバフェット率いるBerkshire Hathawayの子会社である。General ReはBerkshireが90年代後半に買収して以来、トラブル続きであった。引き受けで損失を計上した上に、AIGと同様の再保険バージニア州や豪州の当局とトラブルになっている。General Reは既に当局とは全面的に協力するとしており、多くの電子メールや文書を引き渡している。実際に摘発されるのかどうかはまだ不透明な状況にある。専門家によると、今回のような再保険の取引では売り手買い手いずれでも同じような責任が発生するという。問題は、General Reの経営陣がAIG粉飾決算に加担しているという認識を有していたかどうかにあるという。もし刑事事件になっても個人に対してのみで法人には及ばないと見る向きもある。


・もうすぐ、国土交通省から地価統計が発表される。多くの都市で地価が上昇しているものと予想されている。仙台や京都などの地方の大都市での地価が上昇しているのかが大きな注目点となっている。既に東京の中心部では地価は上昇しているが、それが地方にまで波及するのか注目されている。ただ全体では地価は引き続き下落するものと予想されている。今後も不動産に対する見通しは暗い。人口減少に加えて、移民に対する規制により、土地に対する需要は伸びないためだ。東京の中心部では投資資金の流入により地価が上昇しているという側面もある。東京の地価が手ごろになるにつれて、地方からの流入が増えるために、東京近郊の地価には下落圧力がかかると指摘する声もある。また地価上昇が今回の統計で明らかになると、それが不動産投資への需要を引き起こす可能性を指摘するアナリストもいる。


今日読んだ記事では、インドの修道院で育てられた米国人の記事が面白かった。経済紙とは思えないような記事が一面に出ているのがWall Street Journalの変わったところだ。この記事は新聞記事というよりも一冊のノンフィクションとしても成立しそうなぐらい濃いものだった。

バフェットのGeneral Reに関しても話題が多い。General Reに関してはさすがの投資の神様も誤算といったところか。かつてUS Airで大損したエピソードを思い出した。今後二度と航空株に投資しないように部下に以下のように命じたという。「将来、私が航空株に投資すると言い出した場合は、遠慮なく私のけつを蹴り上げてくれ。」と。