日本人と日本文化 / 司馬遼太郎、ドナルド・キーン

日本人と日本文化―対談 (中公文庫)

日本人と日本文化―対談 (中公文庫)

読了。非常に面白い。ドナルド・キーンという名前はよく聞くが、ラフカディオ・ハーン以来の日本文学者とは知らなかった。日本文化と日本史の知識は深く、司馬遼太郎を上回るほどである。なんか似たキャラクターの二人が楽しげに話しているといった印象を受けた。どちらかというと司馬遼太郎の発言が多かったのがすこし残念か。
キーン氏によると日本で初めてできた寺は大阪の四天王寺らしいが、一種の迎賓館のような性格を有していたという。今でこそ四天王寺のあたりは内陸部になっているが、当時は周りは海だったので小高い丘に作った四天王寺は、外国から来た船には一番最初に見える建物ということになる。日本という国の立派さを外国人に見せつけるために作られたものらしい。その当時から日本人は外国から自分たちがどのように見られているのか、非常に気になって仕方がないという性格を有していたようだ。

足利義政に対する議論も面白い。応仁の乱で京都は大混乱、多くの死者が出ていたが幕府のトップである義政は何もせずに銀閣寺を建てて風流を楽しんでいた。政治家としては最低なのだが、日本ではなぜか評価は高い。日本では政治家を評価する際には実務能力ではなく、教養とか美学とかそういうものを重視する傾向があるようだ。

日本にやってきた外国人、日本人の戦争観の話も面白い。日本では戦争は裏切りが当たり前で、戦闘そのものよりも、戦闘以前の舞台裏ですべてが決まってしまうと言う特徴があるとの指摘が興味深い。もちろん、これは日本人同士の戦争の話であり、外国の場合は当てはまらないのだが。