エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?

エンロンの成長から崩壊までを描いたドキュメンタリー。アマゾンのおすすめで発売は知っていたものの、近所のツタヤに置いてあるとはびっくりだった。しかも10本近く在庫があった。
関係者のインタビューやテレビ映像などで構成されている。紹介されている出来事自体はあまり目新しいものではないが、映像だと説得力がある。エンロンのキャッチフレーズが「ask why」というのが非常に皮肉である。株式市場の予想を上回る高収益を計上しておきながら、アナリストや投資家は誰も「ask why」とは自問自答しなかった。理屈は分からないものの、高い利益を上げているだけで株主としては満足していたのだ。今から振り返るとめちゃくちゃな話であるが。
エンロンの高収益が可能になった一因が、時価会計(mark to market)であった。将来見込める売上を現時点で計上できるという無茶な会計処理である。将来の予想であるため、非常に主観的なものにならざるを得ない。エンロンとしては利益を自由に操作できるためにも、どうしても時価会計の採用に進まざるを得なかったし、採用が認められたときには社内で大騒ぎになったという。

エンロンの成長の立役者であったCEOのスキリング氏の愛読書が「利己的な遺伝子」(ASIN:4314010037)だと紹介されている。エンロンにおける強欲さと関連づけられているようでもあり(題名の「利己的」がそう解釈させるのだろう)、誤解されているような印象だ。

同社のトレーダーは、カリフォルニアの電力危機を生み出した張本人であるかのように描かれている。なぜトレーダーは倫理観を失ってしまうのか、この説明として、ミルグラム服従実験も紹介されている。