キャピタル 驚異の資産運用会社 / チャールズ・エリス

キャピタル 驚異の資産運用会社

キャピタル 驚異の資産運用会社

今度はこの本を読む。発売当初より気になっていたが読む機会がなかった。今まで読んでいなかったのが悔やまれるほど面白い本だ。まあ資産運用業界に関心がなければおもしろさも半減してしまうと思うが。
「敗者のゲーム」(ASIN:4532350689)のチャールズ・エリスがアクティブ運用の機関投資家であるキャピタルについての本を書いているのも面白いが、さらに面白いことに前書きを提供しているのは「ウォール街のランダム・ウォーカー」(ASIN:4532350972)のバートン・マルキール教授である。教授によると、パッシブ運用が機能するためには、すぐれた能力を有するアクティブ運用のファンドマネージャーが必要なのだ。全員がパッシブ運用を行うのは市場の効率性が悪化してしまう。

冒頭より、意外な事実を知ることになる。資産運用ビジネスは典型的な装置産業だと思っていた。100億円運用するのも1000億円運用するのも大してコスト的には変わらないためだ。しかし同社の創業者は早い段階よりこのような図式は成り立たないと見ていたという。実際、同社の人件費は運用資産の伸びと同じ程度で増加しているという。

同社を特色づけるのが、チーム運用という体制である。マゼランファンドのピーター・リンチのように、運用会社はスターファンドマネージャーを前面に押し出すことを好む。しかし同社では早い段階よりチーム運用に切り替えていた。チーム運用と言っても、合議制という訳ではない。一つのファンドをたとえば4つに分割して、それぞれを異なるファンドマネージャーに割り当てるという仕組みである。ファンドマネージャーが割り当てられた運用資産のパフォーマンスに責任を有する。面白いのが、同じファンドで異なるファンドマネージャーが同一銘柄を売買する際には、自分が運用していない部分を担当しているファンドマネージャーが反対売買を実行しようとしていないか事前にチェックし、もし反対売買を行うのであれば、市場に注文を出さずに、ファンド内部で売買を完結させてしまうという。この方法により取引コストは大幅に削減できる。
同社について初めて知ったのは、98年1月12日号のBarron'sのカバーストーリーで同社が大きく紹介されていたためだ。上司の指示による翻訳までしたからよく覚えている。この際に、チーム運用についても知ったのだが、本書を読むまではチーム運用を支えるインフラまでは考えもしなかった。本書では1億ドルもの投資を行ったというが、少し多すぎるような気もしないではない。間違いなのではないかと思ってしまう。