つきあい方の科学―バクテリアから国際関係まで

つきあい方の科学―バクテリアから国際関係まで (Minerva21世紀ライブラリー)

つきあい方の科学―バクテリアから国際関係まで (Minerva21世紀ライブラリー)

読了。最後の章にこれまでの議論がまとめられており、ここだけ読んでも充分に面白い。
エゴイストの集団であっても、互恵的な協調関係が生まれる可能性は大きいというシュミレーション結果は将来への希望をもたらすだろう。多分。
反復的囚人のジレンマゲームで勝つ戦略は「しっぺ返し」であり、きわめて単純なものだ。コンピュータシュミレーションでの結果であるものの、人間社会でも十分通用しそうな教訓がこの戦略には含まれている。以下の通り。

  • まず初対面の人とは協調しろ。
  • 自分から裏切るな。
  • しかし裏切られたら、すぐに怒りを示せ。(つまり裏切り返せ)
  • ただ、裏切られたことを根に持つな。(つまり裏切り返すのは一回のみ)

単純で行動が予測しやすい。それが逆に相手の協調を引き出しやすくする。策におぼれてしまうと相手もどんな基準に基づいて行動しているのか、当方を理解できなくなってしまう。スポーツのような勝ち負けが明確に分かれる状況ではこの方法は有効かもしれないが、現実社会では勝ち負けがはっきりすることは少ない。相手が勝ったからといってこちらが負けたわけではないことも多い。双方ともに勝つことも負けることもあるのだ。このような場合ではできる限り相手の協調を引き出すことが大事になる。関係が長続きする見通しを双方ともに持っていることも重要だ。一回きりの関係だと考えると協調するよりも裏切るのが得策になるのだ。