カズオ・イシグロのインタビュー

ogawamaさんより教えてもらったのだが、文学界という雑誌にカズオ・イシグロのインタビューが掲載されていた。近所の本屋には置いてなくて丸善で立ち読み。「わたしを離さないで」(ASIN:4152087196)に関する著者本人の製作意図の説明が非常に面白い。生命倫理といった社会的なメッセージが込められているのではと読み解く人も多いようだが、著者の意図したものではないみたいだ。ヘールシャムは子ども時代のメタファーだという発言に納得。厳しい現実を子どもに直接触れさせないように大人が情報をコントロールしているのがヘールシャムらしい。キャシーをはじめとする3人は加速した人生を送っているだけ、人よりも早く老化を迎えるだけという主張にもうなずく。3人が無抵抗に運命に従っていることに疑問を感じた私だが、死という運命にはほとんどの人は無抵抗に従うのかもしれないと考えるとこの3人の態度も理解できるような気がした。このインタビューを読むと「わたしを離さないで」はそれほど奇妙な小説でもないのかもしれないなと考えるようになった。人間という存在をより純粋に描くために、舞台設定をあえて奇妙にしてみただけなのかもしれない。
村上春樹を高く評価する発言もある。知らなかったが村上春樹は世界中でかなり高い評価を得ているようだ。