ヨーロッパ帝国主義の謎―エコロジーから見た10〜20世紀

ヨーロッパ帝国主義の謎―エコロジーから見た10~20世紀

ヨーロッパ帝国主義の謎―エコロジーから見た10~20世紀

半分程度まで読んだ。非常に面白い。ヨーロッパ人たちが世界中に植民活動を行ったわけだが、成功したケースは限定されている。成功した場所(著者はネオ・ヨーロッパと呼んでおり、アメリカ大陸やオーストラリア、ニュージーランドなど)には共通点があった。原住民が少ないことに加えて、気候もヨーロッパに似ていることなどである。日本や中国ではうまくいかなかったのはすでに確立している文化があったことと、人口が多かったという理由が大きいようだ。
病原菌は必ずしもヨーロッパ人の有利なように作用したわけではない。確かにアメリカ大陸への進出では助けになったかもしれないが、アフリカやアジアへの進出ではヨーロッパ人たちが現地の病原菌に苦しめられているのだ。病原菌をついた毛皮を原住民にプレゼントするヨーロッパ人という伝説もあるが、どこまで本当かは疑わしい。当時の科学知識では細菌を化学兵器として扱うのは無理で、ばら撒いた病原菌が自分たちに跳ね返ってくるリスクも大きかったのだ。
雑草や家畜がヨーロッパ人の世界進出によりどのように広まっていったのかという箇所も面白い。雑草の繁殖力は特に驚きはないが、豚や牛、馬の繁殖力の強さには驚かされる。いずれもヨーロッパ人が新大陸に持ち込んだのだが数が多くなりすぎて野生化している。豚の生産性の高さも驚きだ。食べたものの2割程度が食肉に化けるという。しかも雑食性なのでえさの調達という点でも都合が良い。牛の場合は5%以下なので食肉を得るという点では豚は非常に魅力的だ。

大きな疑問として残るのが、なぜヨーロッパ人は海外に出ようとしたのかという点だ。中国も鄭和による海外進出の動きがあったのに逆戻りしたし、日本も鎖国を続けていた。そんな中、なぜヨーロッパ人が海外進出を始めたのか。航海技術の発展は海外に出たいという熱意を後押しする要因になったかもしれないが、それのみが原因とも言えないような気がする。本書の後のほうでこの問題に対する著者の考えが出てくるかもしれない。



この著者の他の本も読みたくなる。翻訳されているもので読んでいないのは、「史上最悪のインフルエンザ 忘れられたパンデミック」(ASIN:4622070812)と「飛び道具の人類史―火を投げるサルが宇宙を飛ぶまで」(ASIN:4314010045)の二つのみ。しかし翻訳されていないものも多いようだ。「The Columbian Exchange」(コロンブスの交換)(ASIN:0837158214)や「Germs Seeds & Animals」(ASIN:1563242508)など。後者の題名は「銃・病原菌・鉄」みたいである。