入門経済思想史 世俗の思想家たち

入門経済思想史 世俗の思想家たち (ちくま学芸文庫)

入門経済思想史 世俗の思想家たち (ちくま学芸文庫)

引き続き読む。「ヤバくない経済学」だと書いたが、この本も別の意味でヤバいと思う。というか、経済学自体がヤバく危険なものであったことが最初のほうで紹介されている。経済学者は権力は持っていなかったし、たいした財産も持っていない場合がほとんどだったが、将来の社会を大きく変える影響力を持っていたのだ。
アダム・スミスが登場するまでには経済学はなかったらしいのだが、それは市場システム自体が存在しなかったためである。生産要素である「土地」「労働」「資本」は市場で自由に取引されるようなものではなかった。土地を売買することは考えられなかったし、労働は伝統や命令で律されていたのだ。労働者は特定の地域に縛り付けられて、職業も親のものをそのまま引き継ぐのが普通だった。こんな状態では価格シグナルによって再配分を行うこともできないのはあたりまえでだった。
現在から振り返ってみると、市場経済はごく当たり前のものに見えるので、そんなに古くからあるものではないという指摘には改めて驚かされる。世俗化(脱宗教化)も市場経済を推し進めた原因なのだろう。