歴史の方程式―科学は大事件を予知できるか

歴史の方程式―科学は大事件を予知できるか

歴史の方程式―科学は大事件を予知できるか

読了。最初は難しいと思っていたがどんどん引き込まれていく。しかし「歴史の方程式」という題名は内容とそぐわないような気がする。難しく言うと「臨界状態における自己組織化」になるが、これだと何が何やら分からないだろうし。。
非常に不安定な臨界状態はごくまれな現象だと思われていたが、実際には自然界(人間の社会でも)で広く観察されることが明らかになってきた。臨界状態にあるとごく些細な出来事が相互作用を通じてとてつもない結果をもたらす可能性がある。しかも最初の段階では結果を予測することもできないという困った現象でもある。しかし冪乗則に従うということが研究によって判明してきた。冪乗則に従うということは、典型的な結果が存在しないということを意味する。例えば地震の規模と頻度は冪乗則に従うので(規模が大きい地震は極めてまれにしか発生しない)、典型的な規模の地震は存在しないという。もちろん地震の予測も不可能に近い。地震に意識があったとしても、地震自体にも最終的にはどの程度の規模になるのかは分からないのだ。(典型的な地震の規模があるのであれば、地震の規模と頻度は正規分布のような形状になる)

やはり一番刺激的なのが、人間社会にも冪乗則が成立するという点だろう。人間には独立した意思が存在するが、他人の影響を受けるため相互作用が発生する。これが株価暴落や都市の形成、戦争などのイベントに大きな影響を与えている。臨界状態では、些細な現象が大きな結果をもたらす可能性があるので、単純な原因追求はあまり意味を持たない。たとえば第一次世界大戦の発端はオーストリア皇太子の暗殺であり、暗殺が発生した原因は、皇太子を乗せた自動車が道を間違えたせいである。しかしこの点だけを見て、第一世界大戦の原因は自動車運転手のミスとは決め付けることはできない。
臨界状態にあるからこそ、歴史が成り立つという指摘もある。臨界状態にないということは、完全なランダムか、それとも完全な秩序かのいずれにしかならない。そこでは歴史自体が意味を持たなくなる。
誰でも歴史を大きく動かすようなイベントを引き起こす可能性がある。歴史は偉人達が作り上げたものではない。

頭の整理ができておらず、思いついたことを書いてみた。やはりもう一度読まないとだめだな。

読んでいるとTipping point(ASIN:487031469X)も連想させる箇所もある。パラダイムシフトの箇所を読んで、「科学革命の構造」を購入してみた。冪乗則自体もパラダイムの変化を引き起こすのだろうか。