影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか

影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか

影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか

読了。非常に面白かった。権威に人が盲目的に服従してしまうかという点は予想以上に強力なようだ。たちの悪いことに影響を受けている人は権威の影響を受けていることに気づいていないという点である。医療現場においてこの問題は深刻なものになってしまう。医者がおかしな処方を行ったとしても、経験豊かな看護婦は反論することなく盲目的に従ってしまうという実験結果が紹介されている。
希少性を訴えて承諾を得ようとする行為も取り上げられており、このような宣伝文句はよく見かけるところだ。数量限定や期間限定で商品を売り出す場合である。選択肢を奪われてしまう(または奪われてしまうとの見通しがある)と人は反発を示し、それが衝動的な行動に結びついてしまう。その結果後で考えると後悔するような意思決定をしてしまうのだ。印象的だったのが、一度自由を与えてしまうとそれを取り上げるのは非常に難しいという点である。革命は貧困層が起こすのではなく、貧困から抜け出し豊かになりつつあるものの、なんらかの理由でその予想に懸念が生じた場合に発生するという。革命ではないが、1960年代に黒人の公民権運動が活発になったのもこれと同じらしい。既に60年代には黒人の社会的・経済的地位はかなり向上していたのだ。
大量の情報が人間に襲ってくる現代社会において、効率的に意思決定を行うためには思考を省略して簡便的に判断する必要がある。そのためにこの本で紹介されている特徴が利用されるわけだ。元来この本で紹介されている簡便的な思考方法は合理的なものであるが、それを逆手にとって悪用しようとする人が多いのも事実であり、無意識に判断している事柄に対して意識を振り向かせることは必要なのだろう。思考方法を思考する、メタ思考ということか。

昨日届いたトップポイント11月号にもこの本のサマリーが紹介されていた。10年以上に出版された本だが、ロングセラーということで紹介したようだ。