人間この信じやすきもの―迷信・誤信はどうして生まれるか

人間この信じやすきもの―迷信・誤信はどうして生まれるか (認知科学選書)

人間この信じやすきもの―迷信・誤信はどうして生まれるか (認知科学選書)

読了。最初はもう一つかなと思ったのだが、3000円以上の価値は充分ある本だと思う。専門書のような扱いになっているのだが、多くの人が読むべき本だと思う。ただ前にも書いたようにクリティカル進化論を先に読んだほうがいいとは思う。
本書の中で気になったのが、社会科学に対する評価の高さである。自然科学では理論で明快に説明できることを扱うのに対して、社会科学では曖昧なものを扱うことが多い。そのため実験手法においてもいかに予断や偏見、錯覚などが混入しないか慎重に扱われる。このような実験手法を身につけることが現実社会の中で迷信・誤信から実を守るために役に立つのだという。
超能力に関する説明も豊富に取り上げている。超能力の歴史は、超能力の存在を証明したとする科学者と、その証明が間違っていたと証明する科学者達の争いの歴史でもあった。人間はランダムなものを好まず、ランダムなデータの中に秩序を見いだす欲求が強いことが、超能力を誤信する理由の一つとして指摘している。
誤信を防ぐためには確率を学ぶのが有効だという。まれにしか起こりえないと誤解すると、ある出来事に何らかの運命や超能力の存在を勘違いしてしまうためだ。あるグループ内で誕生日が同じカップルが存在する確率が紹介されていた。グループ内に23人以上存在すれば誕生日が同じカップルが存在する確率は50%程度になるという。35人だと85%にまで上昇する。確率を正しく認識しないと単なる偶然に過剰な意味を感じてしまうのだ。
この本の訳者である守 一雄氏のページも面白い。面白そうな書評が掲載されている。http://zenkoji.shinshu-u.ac.jp/mori/dohc/dohchp-j.html


クリティカル進化(シンカー)論―「OL進化論」で学ぶ思考の技法

クリティカル進化(シンカー)論―「OL進化論」で学ぶ思考の技法