暴かれる嘘―虚偽を見破る対人学

暴かれる嘘―虚偽を見破る対人学

暴かれる嘘―虚偽を見破る対人学

半分程度読んだ。すこし書いておく。
嘘を見破るのは難しい。しかし不可能というわけではない。嘘をつく際に何らかのヒントが嘘をついている人(この本では虚言者と呼んでいる)からもれ出てくるためだ。それは感情の表れである。嘘がばれるのではないかという不安が原因だ。
しかし感情の変化だけに着目するのも誤解を招く可能性がある。一度しか面会したことがない場合、その人が通常どのようなしぐさをするのか、どのような話し方をするのかが分からないためだ。また嘘をついていない人が、自らが虚言者と誤解されるのではないかという不安を感じ、それが体外になんらかの形で現れるということもある。
精神異常者や天性の虚言者(この本ではヒトラーを挙げている)では、嘘をついていることに罪悪感を感じないので感情の変化を外部からうかがい知ることは難しい。天性の虚言者ではなくても、何らかの大義に基づいて嘘をついている場合(患者のためを思って嘘をつく医者、愛国心からスパイ活動を行う人など)も罪悪感を感じることはない。
どのようにして感情の変化を読み取るか、そのための方法がいくつか紹介されている。自律神経(心拍数、体表温度、発汗量)における手がかりが興味深い。自律神経を見ることは感情の大きさを知ることができても、どんな感情なのかは分からないというのが定説だったらしいのだが、この本の著者はこれを覆す実験結果を得たという。しかしこの手の実験を行う際には実験の構成をかなり入念に立案する必要があるみたいだ。感情が入り混じらないようにする必要がある。人工的に怒りや不安といった感情を生み出すこともかなり難しい作業だ。しかも複数の感情が混同してしまう可能性もある。実験台にされて衆人環視の下に晒されるだけでも充分感情に変化を与えることは必至である。そのため著者はベテランの俳優を実験台に利用している。
感情を読み取る方法として、表情を利用する方法も紹介されている。感情がどのように表情に表れるのかは、文化の違いはないみたいだ。しかし社会における規範が異なるために、感情を表情にあらわに出すことが抑制されることはある。表情は意識的に操作しやすい。子供の頃からしつけの効果で、本人も意識しないうちに表情を変化させていることもある。キーポイントは一瞬(1秒未満)表れる「微表情」というもの。この一瞬に抑制される前の本当の感情が表情となって表れるという。短い時間であるので見極めるのは難しそうだが、人間が表情を読み取る能力は非常に高いのでそれなりに練習するとできるようになるという。
表情は顔の筋肉で作られるわけだが、顔の筋肉の中でも意識的に動かすことができるものとそうではないものと2種類ある。そのため意識的に動かすことができない筋肉を見ると本当の感情をうかがうことができるのだが、これも完全とは言えない。ある感情を追体験することで意識的に動かすことができない顔の筋肉を動かすことも可能になる場合もあるのだ。
「微表情」の考えは「第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい」(ASIN:4334961886)に出てくる「シン・スライシング」にも関係しそうな感じだ。