20051207

以下の記事を読んだ。今日は5時40分に起床。これだけ早く起きると出社前にかなり読むことが出来る。

  • NIH(National Institutes of Health)の感染症チームを率いているFauci博士はエイズ研究などで高い評価を得ている。同氏の知名度は高く、ブッシュ大統領鳥インフルエンザ対策を発表する際に、同氏に相談したことを明らかにしたぐらいである。またロックバンドのU2は同氏に捧げる歌まで作った。現在、同氏は奇妙な立場に立たされている。一種のベンチャーキャピタリストのような役割を演じることになったのだ。これは同時多発テロ以降の米国の政策がある。バイオテロに対抗するために政府は多額の予算を計上して薬品を備蓄することになったのだが、その薬品を供給することができる企業を育成するために予算が別途割り当てられている。この予算をどの企業に割り当てるのか、それを決めるのが同氏が率いるチームなのだ。しかしこの資金援助を巡っては議論も多い。今までは大学などの研究機関にのみ援助を行っていたので、民間企業が相手だと様々な問題が発生している。援助を受け取ると研究開発の様々な面で介入を受けるとの指摘や、ライバル企業に自社の情報を提供されたといった苦情まで出ている。NIHが提供するのは出資ではないため株式公開しても収益はない。

  • 冷戦終了後、ハリウッドでは敵役を見つけるのが難しくなった。昔はソ連などを共産国家やナチスなどを敵役として登場させることはできたが、さすがに現代を舞台にした映画ではそぐわなくなってきた。そこで敵役として登場することが多くなったのが企業経営者達である。ハリウッドには映画の中で自分たちが偏見に満ちた形で描かれないように、少数民族などのグループが活動を行っている。映画会社も公開後問題になるよりは事前にこのような圧力団体を招いて脚本を読ませることも多いのだ。また映画の興行を考えると特定の国を敵役として登場させることもできず、アラブ国家やイスラム教徒なども同様である。そのため敵役としての候補者が非常に少ないのだ。そのような中で人気を集めているのが、企業経営者である。彼らにはまだ映画会社に対して圧力を加えるような組織力はないのだ。ミッション・インポッシブル2にような描かれ方が代表的なものである。
    敵役を見つけるのも大変なのだ。映画が単なる娯楽ではなく社会に対するメッセージとして受け止められている証拠だと思う。
  • 10年前には倍以上あった時価総額の格差が急激に減少しつつあるのが、コカコーラとペプシコだ。18ヶ月前に会長・CEOに就任したIsdell氏の在任期間の間に、コカコーラの株価は2割近く下落している。反対にペプシコの株価は1割以上上昇しているのだ。そのため時価総額の格差がかなり縮まっており、数ヶ月内には初めて逆転するのではないかと見られている。首位の座を守るためにはIsdell氏が本日開催されるアナリストミーティングでどの程度ウォール街を納得させる戦略を提示できるかが鍵となる。同社は90年代には高成長を遂げたものの、その後はマーケティング費用の削減などで低成長に陥った。 CEOに対する信頼は高いものの、そろそろ実績がほしいとの見方が投資家には多いようだ。同社の収益の多くはソフトドリンクで占められており、ペプシコのようにスナック菓子などには手を出していない。手元流動性は高水準であるために多角化を進めるための買収も期待されるが、現経営陣は否定している。
    コカコーラとペプシコ時価総額がかなり接近しているとは初めて知った。
  • 対ドルや対ユーロで大幅な円安となっている。これは日本の輸出企業にとっては大きな恩恵となると思われるが、それほど単純なものではない。上昇を続ける株式市場にとっても円安は好材料の一つではあるものの、銀行や不動産などの内需関連株が上昇相場を牽引しているように主要な材料とは見られていないようだ。輸出企業の業績にとっても必ずしも円安はプラスとは限らない。トヨタ自動車は円安で大きな恩恵を受けるものの、円高で苦しんだ製造業の多くは海外に生産を移転しているため、円安の効果は限定される。たとえば東芝は円安が業績に与える影響はゼロだとしている。輸出品では恩恵を受けるものの、海外で生産した製品の上昇で相殺されるためだ。また企業によっては円安で得た利益を市場競争で勝ち残るために値下げ原資として利用している場合もある。

  • 米国の市民権を得るためには2種類の試験に合格しなければならない。一つは米国の公民に関する試験であり、もう一つは英語の能力を測るものである。試験は事前に用意された100問のリストから、試験官が任意に選んで質問するという形式である。合格率は90%以上と非常に高い。というのも試験内容は極めて単純だからだ。この試験を巡って改正作業が進められている。しかし移民の国である米国で市民を決めるための試験であることから、改正に関しては多くの議論が出ている。まず問題が単純すぎて意味が無く、米国市民としての一体感を育成することができないという批判がある。また試験問題が試験官により恣意的に選択されるという問題を指摘する人もいる。すでにこの改正はクリントン政権のころから7年程度費やしているが、実施までにはあと2年程度かかるという。改正は現状の制度の手直しにとどめ、試験官による恣意性を排除する方針だという。
    日本では帰化する際にはテストはないと思う。
  • 業績悪化で苦しみ、人員削減を進めているビッグスリーとは対照的に、日本を始めとする外国車メーカーはエンジニアの増員を行っている。特にビッグスリーのお膝元であるデトロイト付近で各社研究所を強化している。採用しているエンジニアはビッグスリーレイオフされた人や、ビッグスリーよりも安定した業績の自動車メーカーを好む人たちである。ビッグスリーは短期的には人員削減でコストを低下させることができるものの、長期的には外国車メーカーとの技術力に格差ができてしまうのではないかとの懸念もある。外国車メーカーが米国でエンジニアの増員を行っているのは、本国での人材不足という問題もある。特にこれはトヨタ自動車において明白である。団塊の世代の退職が近づくにつれてこれからは一層人材不足が発生すると見ており、今後は日本の研究所はより先進的な研究に特化し、米国の研究所に権限を委譲するとしている。

  • 米国の通信会社の間では、固定線・携帯電話・ネット接続を一体化した機器やサービスを導入するところが増えている。最近VerizonがMCIを、SBC がAT&Tを、SprintがNextelを買収するなど、多額のM&Aが行われており、この投資に見合った成果を上げるために各社サービスの強化を行っている。また電話サービスを強化するケーブルテレビ会社に対抗するという意味合いも大きい。今までもこのような複数のサービスを一体化したものは発売された経緯はあるがうまくいっていなかった。そのためアナリストもどの程度市場規模があるのか確信が持てない状況にある。統合したサービスとは、自宅では固定線を、会社内ではWi-Fiを、屋外では携帯電話を利用する通信機器などがあげられる。ケーブルテレビも同様に統合サービスを導入しており、電話が鳴るとテレビ画面にメッセージが出るというサービスも提供されている。
    電話がかかってくるとテレビに発信元が表示されるようなサービスは便利だ。
  • 商品価格の上昇や経済成長により今まででは考えられなかったような国で巨額の富が蓄積されるようになった。その中での代表的な国がオーストラリアである。この国では90年代初頭から年金積み立て制度が導入された。ほとんどの労働者は所得の1割弱を積み立てなくてはならない。この資金は民間企業が運用することになる。この制度によりオーストラリアには巨額の投資資金が生まれることになった。この資金の投資先を発掘するのに大きな役割を果たしているのが、地元の投資銀行であるマッコーレ(Macquarie)銀行だ。この銀行は世界中にあるインフラを買い取り、それをファンド形式にして投資家に転売するという商売を行っている。このビジネスは成功を収め同社は高い成長率を見せている。同社は空港や道路、発電所など今までは政府が管理していたようなインフラを購入、またはリースという形で取得している。米国でもシカゴを始め各地の高速道路をリースしている。民間企業が道路運営することに対しては安全面や整備面で懸念を見せる専門家もいるが、市場メカニズムを導入することで適正な価格を通行料に反映させることができるとみる経済学者も多い。
    Awash in Cashという連載シリーズの5回目。マッコーレ銀行の事業はHeard In Asiaでもよく取り上げられていたのでそれほど珍しくはない。